BIM/CIM講演会

日時:2020年10月9日(金)15:00~
場所:ホテルニューオータニ
講演者:国土交通省 技監 山田 邦博 氏
「BIM/CIM建設業の進むべき方向性」

10月9日(金)、JCITC主催により「BIM/CIM推進パートナー会議」をホテルニューオータニ東京にて開催し、国土交通省技監山田邦博氏を講師にお招きして、「BIM/CIM建設業の進むべき方向性」と言うテーマで建設業の様々な視点からその方向性について貴重なご講演を頂きました。コロナ禍ではありますが、ソーシャルディスタンスを取った形で全国各地で活躍されている建設業関係者の皆様に参加していただきました。
 冒頭、JCITC吉田六左エ門代表理事の挨拶では、山田様にはかつて技術審議官時代にもCIMという新しい考え方についてご講演をいただいた経緯が説明されました。
 今回は、その後の社会情勢の変化を踏まえて、これからの建設業の進むべき方向性を伺うことにしました。
 山田邦博技監による講演では、BIM/CIMの導入がこれからの建設業には必要不可欠でいろいろな段階で関係者間で情報を共有することにより、受発注者双方の業務効率化・高度化がIT技術の進化と共に進めて行くことが出来ると言う方向性をお話し頂く貴重な機会となりました。

●災害時に効果を発揮したインフラ整備
狩野川放水路は、昭和23年のアイオン台風を契機として昭和26年に着工し、その後、昭和33年の狩野川台風による甚大な被害を受けて計画を見直し、昭和40年に完成しました。令和元年の台風第19号は、狩野川流域に対して、狩野川台風よりも多くの雨をもたらしましたが、狩野川本川からの氾濫を防ぐことができ、人的被害をゼロ、家屋の浸水被害も内水等による約1,300戸に抑えることができました。
昭和33年には死者・行方不明者は853名、堤防決壊14箇所、家屋浸水6,775戸でしたが、令和元年は、死者・行方不明者は0名、堤防決壊0箇所、家屋浸水1,300戸でした。
 令和元年の台風第19号は、利根川上流ダム群においては、八ッ場ダム(7,500万m3)を含む約1億4,500万m3の洪水を8つのダムで貯留しました。当時八ッ場ダムはまだ試験湛水中で、これらのダムの貯留により、下流域では水位を約1m下げることが出来ました。約半分の貯留可能な八ッ場ダムがなければどうなっていたか?
 平成30年台風21号で、大阪港では第二室戸台風を上回る既往最高の潮位を記録しました。昭和36年の第二室戸台風では約13万戸が浸水しましたが、その後の海岸・河川堤防、水門の整備(約1,300億円)や適切な維持管理(約200億円)により、市街地の高潮浸水を完全に防止しました。被害防止の効果は約17兆円と推定されます。この場合もこれらの整備がなければ被害は甚大でした。
 九州自動車道では、土砂崩れなどにより大規模な通行止めが発生しましたが、4車線区間であったことから、被害のない車線を活用し、早期に交通開放するなど、緊急車両や救援物資等の輸送機能を速やかに確保できました。

●今後のインフラ整備
気候変動に伴い災害が激化するなか、激甚な水害や土砂災害が全国どの地域でいつ発生してもおかしくないことから、達成すべき目標等を明確にした中長期的な計画の下、関係者が一体となってハード・ソフト一体の事前防災を計画的に推進していきます。令和元年東日本台風により、甚大な被害が発生した東日本の7水系において、国、都県、市区町村が連携し、今後概ね5~10年で実施するハード・ソフト一体となった「緊急治水対策プロジェクト」を進めています。
 近年の災害の激甚化への対応、既存の市街地等への影響、地下空間利用の広がりなどを踏まえて、道路、河川、まちづくりの複合的な観点を早期から取り込んで進めることにより、インフラの効率的な整備・活用を実現し、相乗的な効果や新たな価値の創造が期待されます。

●インフラ分野のDXに向けた取組
新型コロナウイルスをきっかけとして社会のデジタル化が進展し、オンライン会議や地方居住が進むなど仕事も働き方も大きく変わることが予測されています。今年から第5世代移動通信システム(5G)サービスが開始され、データの高速通信(4Gと比較して20倍)、多数同時接続が10倍、ディープラーニングの進化による画像認識市場が拡大しています。今後のAIの言語解析の拡大が見込まれ文書管理などへの適用が進んできます。クラウドサービスの国内市場規模は年々拡大してきており、企業の既存システムをパブリッククラウドに移行する動きが加速しています。
 インフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革することで、インフラへの国民理解を促進し、安全・安心で豊かな生活を実現しようとしています。
 その中で一つ目は「行動のDX」で、例えば、従来は現場まで時間をかけて移動して確認していましたが、発注者は移動することなく事務所で確認、受注者は現場で待つことはなく現場の状況を映像データ等で報告することが出来ます。過日、国土交通省大臣室で約300Km離れた現場とリアルタイルに繋いで鉄筋検査を実施しました。
 二つ目は「知識・経験のDX」で、高い技術力を持った人のノウハウを効率的にデジタル化して、AI学習用データとして整備、開発して熟練技術を継承していく事です。
 三つ目は「モノのDX」で、この例がBIM/CIMになります。従来設計は2Dで紙により図面化していましたが、デジタルで3D化して可視化することによって見落としがちなミスなどをデジタル的に判るようにしていきます。
 これらのインフラ分野のDXによって、国民、業界、職員にとっても、公共事業の可視化による理解の浸透、安全で快適な労働環境の実現、建設業の魅力の向上、様々な働き方の実現を可能にします。これらのDXの施策としては、デジタル化し、リアルデータを取得し、ストックデータを活用する事で安全性、生産性を向上する事が可能となります。
 本省、地方整備局、研究機関と協同で人材育成を実施していくことにしています。主な工事について令和5年までには、BIM/CIMを活用して実施していきます。ベンチャー企業や大学と連携して開発した革新的技術によるオープンイノベーションを促進し、フィールドでの試行・検証や技術開発を行い、新技術の現場実装を可能にしたいと思います。建設業のDXに向けた環境整備では、先ずは人材育成そして建設キャリアアップシステムによって技術者・技能者の履歴をデータベース化するものです。まちづくりのデジタル化の構築では、3D都市モデルをベースとして、まちづくりにかかるあらゆるデータを連携・活⽤するデジタル基盤の整備を進めることで、まちづくりの進め⽅を根本から変⾰する「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」を推進していきます。河川については、ドローンや水中カメラで点検しています。砂防については、熊本の阿蘇⼤橋地区の⼤規模斜⾯崩落現場等で、施⼯者の⼈命に危険を及ぼす恐れがあるため、無⼈化施⼯による安全な施⼯を実施しています。今後、5Gになってくると遅れもなくなり生産性が向上します。下水については、地域毎にシステムが出来上がっていてそれぞれが互換性がなく管理上不便ですが、今後は共通のシステムにしようと言うことで取組を実施しているところです。道路については、舗装をこれまで目視でチェックしていたのですが、画像でAI技術を活用して点検のデジタル化を進めています。諸外国においては、情報通信技術を活用した港湾物流効率化の取り組みが加速している状況を踏まえ、国際競争力を強化するため、我が国の港湾においても新技術を活用した大胆な変革が求められており、あらゆるヒト・モノ・情報をつなぎ、新たな価値を生み出す「フィジカル&サイバープラットフォーム」への転換を目指す必要があります。滑走路、誘導路等舗装点検において、車両からの撮影により、ひび割れの自動検出や長さや幅の自動測定、記録を行い、これらデータ管理を行うシステムを現場実証中です。草刈りに関しては、大型草刈り機にGPSを搭載して総合的にシステムの中に入れて無人化を図ります。BIM/CIMモデル等の3次元データを⼀元的に集約し活⽤する国総研DXセンターを設置し、ソフトを持たない⺠間企業でもBIM/CIM活⽤を可能とするため、DXセンターが最低限のソフトを利⽤可能にします。DXの位置座標については、共通ルールの「国家座標」にする事で他のデジタルデータと接合できます。
 国土交通省においては、生産性革命のエンジンとしてBIM/CIMを捉えています。そのためにBIM/CIM推進を委員会をはじめとして、全国各地にi-Constructionモデル事務所を配置し、高度利活用を実施しています。発注者・受注者・関係者でコミュニケーションを取りながら皆様に取り組んでいただければと思います。